井上ひさしさんはまず覚えておいてほしいと、第一次世界大戦の戦死者のうち軍人が95%、一般市民が5%であったことを示した。それが第二次世界大戦、朝鮮戦争をへてベトナム戦争になると戦死者のうち軍人が5%に対し一般市民が95%と完全に逆転。戦争で死ぬのは軍人ではなく私たち市民、それが現在の戦争の実態であると語った。
そして世界の流れのなかの日本国憲法の位置ということで、1899年の第1回ハーグ国際平和会議にはじまる世界の平和構築の歴史を話した。
なかでも重要だったのは1907年の第2回で中立国を認めたこと。第二次大戦中に中立国がやってきたことを紹介しながら、戦争が起こったときにはどちらにも組みせず中立を宣言する権利があることを語った。
1999年の第3回では「公正な世界秩序のための10原則」の第1原則に「世界各国の議会は、日本国憲法九条にならい、自国政府に戦争を禁止する決議をすべきである」と書かれたことを紹介、「その本家本元の憲法が変わってしまったらどうなるでしょう」と井上さん。
そして戦後、新憲法を手にした日本は、南極をめぐって米ソが対立するなかで日本国憲法の内容を訴え、南極はどこの国でもないとし軍事基地の建設を禁止した南極条約制定にこぎつけたこと。これが南太平洋非核化条約、ラテンアメリカ非核化条約、東南アジア非核化条約、アフリカ非核化条約につながり、南半球はすべて核廃絶になっていることを話した。
「日本国憲法が言っていることが実は実現している。その流れを大事にしながら、他人の都合で死ぬのはやめる。死ぬのは自分で決める。それが私のいう憲法九条を守ることの意味です」と話をまとめた。
笑いもまじえながらの井上ひさしさんの語り口は、文字ではなく映像でこそ見てほしい。